2024/04/18 22:22

いらっしゃいませ!
Nashville Coffee、焙煎人の村上です。

当店でお出しする珈琲豆はすべて中煎りとなっております。

そうです。

中煎り専門の珈琲豆店です。


もともと私は深煎りで淹れた珈琲が好きでした。
というよりそれ以外を知らなかったといったほうが正しいかもしれません。

珈琲とは本来こういうもので、昔も今もそしてこれからもこのまま何も変わらずあり続けるものであると思っていました。

そんなある日、友人の誘いでとあるカフェを訪れたことで、私の珈琲に対しての固定観念は見事に崩れ去ることとなったのです。

お洒落で洗練された感じの、とても雰囲気のよいカフェだったことをおぼえています。

当時(2015年ごろ)、巷ではサードウェーブという言葉が流行りはじめたころでした。

一般的に珈琲といえば「深煎り」がほぼあたりまえだった時代に、珈琲豆本来の個性を重視するため豆を浅く煎る、「浅煎り」の波が世間に広まりつつあったのです。

そしてそのカフェでいただいた一杯の浅煎りの珈琲によって、私の人生は大きく変わっていくこととなったのです…。

透明のグラスに注がれた湯気のたつそれは、うっすらと赤みを帯びた透明感のある琥珀色、フルーティーでありながらブランデーのような高級感のある香り、そして苦みをいっさい含まない酸味の効いた一杯…。

もともとそれほど珈琲にこだわりを持っていたわけでもなく、どちらかというと興味としては薄いほうでした。

それが…、その飲み物をひとくち口に含んだ瞬間、私の中にあたりまえのようにあった固定観念がきれいさっぱりと消えさり、
新たに珈琲という飲み物に無限の可能性を感じたのです。

というわけで…、

なぜそのカフェでいただいた一杯の珈琲によって、私の人生が大きく変わったのか…、

また、私の中にあたりまえのようにあった固定観念がきれいさっぱりと消えさり、
なぜそこに新たな無限の可能性を感じるに至ったのか…。

それは…、
その時に珈琲を淹れていただいたスタッフの方のひとことでした。

「とにかく飲んでみてください。ぜんぜんコーヒーって感じがしないと思うので。コーヒーというより紅茶といった感じなんですよ!」

さらにそのスタッフの方は言葉を続けました。

「これならコーヒー嫌いな人にも喜んでいただけるはずです。」と…。

そこで私は思いました…。

「コーヒーが嫌いな人に紅茶味のコーヒーを飲ませるんなら最初から紅茶を飲ませたほうがいいんじゃないの?」って…。

「けっこうコーヒーコーヒーとこだわってる割に、何がどうなったのか結局紅茶味になっちゃってますけど…?」って…。

「根本的にコーヒーの存在を否定してるようにしか聞こえないんですけど…。」って…。

友人とは店を出たあとに別れ、駅に向かう途中にあるコンビニで紙コップに入ったコーヒーを買い、発車間際の地下鉄に飛び乗りました。
「発車間際の無理なご乗車はおやめください。」という車内のアナウンスを聞きながらいちばん端の席に座り、先ほどコンビニで買ったコーヒーに口をつける。

両手で包み込んでいる黒い液体の入った紙コップの中に映る、ゆらゆらと揺れ動く自分の顔をぼんやりと眺めながら先ほどのカフェでの記憶を辿ってみる。

深煎りと浅煎り、同じ豆でも焙煎の加減によって仕上がりがまったく違ってくる。
しっかりとした苦みを持たせた珈琲から、珈琲と呼ぶには抵抗を感じる紅茶のようなものまで、そのあいだには無限とも言えるほどの数の珈琲がグラデーションをかたちづくっている。


そうなんです…。
このときに思ったのです…。


珈琲っておもしろいかもな…って。



その翌週には珈琲の勉強を始めてました。

友人が頻繁に利用している世田谷区経堂にある珈琲豆の専門のお店。

珈琲豆の産地や種類や特徴、そして焙煎の度合いによっての香りや味感の変化、浅煎りの時の焙煎スキル、深煎りの時の焙煎スキル。

週末はほぼ毎週お店の方で勉強をさせていただくという生活が数年間続きました。

また、自宅にも焙煎機を購入し、焼いては試飲、焼いては試飲を気が遠くなるほどくり返しました。

2022年の夏…、いろいろと面倒を見てくださった師匠が体調をくずされ、残念ながらそれを期に卒業となりました。

さて、珈琲の勉強を数年したなかであるひとつの結論に達したわけですが、
それは…、
文頭からお付き合いいただいている皆様方はうすうすお気づきかと思います。

浅煎りでしか感じられない品種や産地ごとの個性と香り、深煎りにしか出せないしっかりとしたコクのある珈琲感、そのどちらも失うことなくバランスのとれた焼き加減。


それこそが中煎りです。



品種などにもよりますが、ハイローストとシティローストの中間あたり、もしくは若干シティよりといったあたりを狙って焼いています。

さて、皆さまにはここからとても大切なお話しをしなくてはなりません。

深煎りのお豆も浅煎りのお豆も淹れ方次第でとてもおいしい一杯が出来上がります。
…が、逆に淹れ方次第ではただ苦いだけ、ただ酸っぱいだけといった香りも甘みもないつまらない一杯にもなってしまいます。

その点、中煎りの豆は、浅煎りや深煎りに比べると失敗が少ないといえます。

とは言っても…、豆の量であったり、豆の挽き具合であったり、お湯の量であったり、お湯の温度であったり、淹れる速さであったり、そして淹れ方であったり……、
失敗とまではいかないにしても、出なくていい酸味や出なくていい苦みや雑味が出てしまったりといったこともあったりします。

そしてなにより、趣向品であるがゆえにその方その方の好みも千差万別です。
ご自身が「おいしい」と感じる一杯にたどり着くには、豆の量、挽き具合、湯量、温度、速さなど、多少なりとも調整が必要であると感じます。

皆様には、当Nashville Coffeeでご購入いただきました焙煎豆を使用し、まずはいつもどおりの淹れ方でお試しの一杯を召し上がってみてください。
それから、ご自身の理想とされる一杯に向けての調整をお願いいたします。

ではどのような調整をしたらいいのか、どのような淹れ方が理想なのかをお話しすべきかと思います。

しかし…、
「おいしくなる淹れ方はこれです!」とか、「これをすれば絶対間違いないです!」という言い方は趣向品の代表格と言っても過言ではない珈琲にとって、これは押しつけ以外の何ものでもないです。

あくまでも個人的な意見ですが、実際に正しい淹れ方というものはないように感じます。

反対に間違った淹れ方というものは確実にあります。

ただ、そのあたりに関しては多種多様な意見や淹れ方や考え方がネット上に溢れていますので、私個人の意見やアドバイスなどは控えさせていただきます。

実際に、かなり攻めた方法を取られている方もいらっしゃったりもするので、先入観や固定観念をいったん置いておいて、気になるものがあれば試されてみるのも面白いかと思います。


さぁ、お話しはこれくらいにして珈琲タイムにしましょうか。

最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

楽しい時間、くつろぎの時間、穏やかな時間、忙しい時間…、
皆様の生活のあらゆる時間に寄り添える
たいせつな一杯を、
Nashville Coffeeがお手伝いいたします。

※地下鉄の場面など、ほんの少し脚色もあったりしますが、大筋でノンフィクションですw