2024/04/18 21:35
「当店にて焙煎しました珈琲豆は、挽かずに豆のまま皆さまのお手元にお届けしております。」
焙煎所をオープンしたての頃は、そんなことを言ってました。
皆さまこんにちは。
Roastery and Cafe Nashvilleの村上です。
ではなぜ私がそのようなことを豪語していたかと申しますと、珈琲豆の保存方法のお話しの際に「焙煎後の珈琲豆の最大の敵は水分です!」とお伝えしていました。
そうなんです。
焙煎後の珈琲豆を可能な限り水分から遠ざけてあげることこそが鮮度を少しでも長く保つ「こつ」なのです。
「ということは単純に濡らさなければいいんでしょ」と言う皆さまの心の声がちらっと聞こえたような気がしたのでもうちょっとだけ深掘りしてみますね。
まず、空気には必ず水分が含まれています。
よく、おせんべいなんかの袋を開けっ放しにしてしまって、おばあちゃんとかから怒られた経験って誰しもがあったりしますよね。
そうですね。私だけではなく全員あるはずです。
ぱりっぱりのカリッカリのおせんべいを食べたかったはずのおばあちゃん、
期待に胸を膨らませてひと噛みしたおせんべいがしっとりふにゃふにゃ……。
期待を裏切られる残念な結果に、いつも温厚で声を荒げたことなど一度もない優しいおばあちゃんもあの時ばかりはさすがにブチギレて周りにあたりちらしてました。
おばあちゃんの気持ちを思うと気の毒でなりません。
おばあちゃん、あの時は本当にスミマセンでした…。
おばあちゃん、心からお詫び申し上げます…。
「って、どこを深掘りしてんだ」という皆さまの心の声が、わりと大きく聞こえたので話しを戻しますね。
水分から珈琲豆を遠ざけるというのは、物理的に珈琲豆を濡らさないということではなく、
空気中に含まれる湿気から珈琲豆を守るということです。
では、珈琲豆が湿気、つまり空気中の水分に触れることによってどうなってしまうのかと言うと、おせんべいとまったく同じことが起きるわけなんです。
味や香りの低下だけにおさまらず、角の立った強い酸味、もしくはただただ苦いだけといった奥行きも深みもまったく感じられないつまらない仕上がりに…。
これらはすべて酸化によるものです。
とは言っても、焙煎後の珈琲豆を空気に触れさせないというのは絶対に不可能です。
絶対に不可能ではあるのですが、あることをしないことで珈琲豆と空気の接触を最小限に抑えることができます。
それは…、
焙煎後の珈琲豆を挽かないことです。
そうなんです。
表面積が問題なんです。
表面積は豆のままよりも挽いた状態のほうが爆発的に増加します。
酸化による味や香りの低下や空気中の水分の付着などを最小限に抑えるためにも、
珈琲を淹れる直前の直前まで焙煎豆のままで居させてあげる。
そこが最もたいせつなポイントなのです。
ただ…、ただそうは言っても皆さまの各ご家庭に珈琲豆を挽くためのミルやグラインダーがあるわけではありません。
むしろお持ちでないご家庭のほうが圧倒的に多いはずです。
ですので、挽いたお豆をご希望でしたら、それは遠慮なく「粉」の方を選択していただきたく思っております。
私は…、
「うちの店は絶対に豆は挽かん。どれだけ頼まれたって挽かんもんは挽かんのじゃ!!」みたいな頑固おやじ風でもなければ、
何があっても揺るぎない強固なプライドを持った硬派なやつでもないです。
ないですので、
気軽に「粉で」とおっしゃっていただければ、喜んでお挽きいたします。
いろいろ長々と語っているわりには、一本も筋がとおっておりませんので、そのあたりはご安心くださいませ。
では、同じく豆を挽いた状態のドリップバッグはどうでしょう。
こちらはほぼ密閉状態を保つ個包装をしていますので、酸化速度は極めて緩やかと見ていいでしょう。
ですので保存に関しても、炎天下での車内やバナナで釘がうてるほどの極寒という環境でなければ、常温でじゅうぶん保存が可能です。
というわけで、挽くとか挽かないとかやいのやいの言ってますが、本音としてはやはり挽きたての美味しい珈琲をご自宅でも味わっていただきたいのです。
ネットで調べると手動のものや電動のもの、臼式のものやプロペラ式のもの、あんなタイプやこんなタイプ…、
ほんっとにたくさんの種類があります。
さらにはこんなタイプが良いとかこんなタイプはだめだとか、みんな思い思いの意見を発信しているので、いったい何を信じたらいいのか、いったい何を選べばいいものやらわからなくなってきます。
ということで、まとめます。
みんなが発信している思い思いの意見、すべて正解です。
つまり、どれでもいいんです。
どれを選んでもいいんです。
珈琲豆を挽くことが出来れば道具はなんでもOKです。
たしかに、臼式と呼ばれるタイプのもののほうがむらなく均一に挽くことが出来るのに対して、プロペラ式のほうが割と粗くて挽き具合にもばらつきが出ます。
ネット上でも、珈琲を淹れた際の安定感を考えるなら臼式を選ぶべきとの意見が多いのも確かです。
が、臼式とプロペラ式、どちらを使用してもそこまで味も香りもかわりません。
もちろん、いろいろと数値化する機械を使えば違いは歴然かもしれません。
しかし、人の味覚も曖昧ですし他の情報にも左右されやすいです。
「臼式で挽いたほうが挽き具合も均一でおいしいよ」、
という前情報があることによって感覚よりも情報が優先されたりもします。
とりあえず、
珈琲豆を挽くための道具をお持ちでない方は、この機会に1台、是非ともご用意いただくことを強くおすすめいたします。
安価なものでじゅうぶんです。
ネットで見ると2千円台からあるようです。
まずは挽きたての珈琲豆で淹れた1杯、
この感動をカップに注がれた珈琲とともに味わってみてください。